フリーランスへ支払う業務委託費に関して、源泉徴収の取扱いをまとめました。
- 源泉徴収の概要がわかる
- 源泉徴収をする上での業務委託費の考え方がわかる
目次
1. まとめ
結論から先に申し上げますと、フリーランスへ支払う業務委託費に関する源泉徴収のポイントは以下のとおりとなります。
- 源泉徴収の対象は、給与、退職金、原稿等の報酬・料金である
- 源泉徴収義務者は、会社や個人だけではなく、給与等の支払いをする学校、人格のない社団等も含まれる
- 源泉徴収すべき税額は、支払金額(消費税込)に10.21%を乗じた金額となる
- 1回あたりの支払いが100万円を超える場合、超過額に、20.42%を乗じた金額となる
- 請求書等に報酬・料金等の金額と消費税等の額とが明確に区分されている場合、消費税等の額を除いた金額を源泉徴収の対象としても良い
- 源泉徴収した税額は給与等を支払った月の翌月10日までに納付することとなっている
- 給与の支給人数が常時10人未満の場合、納特の制度がある
- 「業務委託費の支払い=源泉徴収の対象」ではなく、業務委託の内容によって源泉徴収の対象になるかどうかを判断する必要あり
2. 源泉徴収とは?
源泉徴収とは、「①報酬・給与等」を「②支払う者」が、支払いの際に、「③一定額」を徴収することをいいます。
また、その徴収した所得税及び復興特別所得税(以下、「税額」という)を、「④一定の時期」までに支払う者の管轄税務署に源泉税を納める必要がございます。順番に解説していきます。
① 報酬・給与等について
源泉徴収の対象となるものをざっくり区分すると、給与、退職金、原稿等の報酬・料金となります。(非居住者へ支払いは割愛致します。)
ここでは、「原稿等の報酬・料金」について詳しく解説します。
源泉徴収が必要な報酬・料金等とは、原稿料、弁護士への報酬、モデルへの報酬等をいいます。
具体的には所得税法第204条(以下ご参照)に記載されております。
居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。
一 原稿、さし絵、作曲、レコード吹込み又はデザインの報酬、放送謝金、著作権(著作隣接権を含む。)又は工業所有権の使用料及び講演料並びにこれらに類するもので政令で定める報酬又は料金
二 弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、測量士、建築士、不動産鑑定士、技術士その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金
三 社会保険診療報酬支払基金法(昭和二十三年法律第百二十九号)の規定により支払われる診療報酬
四 職業野球の選手、職業拳けん闘家、競馬の騎手、モデル、外交員、集金人、電力量計の検針人その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金
五 映画、演劇その他政令で定める芸能又はラジオ放送若しくはテレビジョン放送に係る出演若しくは演出(指揮、監督その他政令で定めるものを含む。)又は企画の報酬又は料金その他政令で定める芸能人の役務の提供を内容とする事業に係る当該役務の提供に関する報酬又は料金(これらのうち不特定多数の者から受けるものを除く。)
六 キャバレー、ナイトクラブ、バーその他これらに類する施設でフロアにおいて客にダンスをさせ又は客に接待をして遊興若しくは飲食をさせるものにおいて客に侍してその接待をすることを業務とするホステスその他の者(以下この条において「ホステス等」という。)のその業務に関する報酬又は料金
七 役務の提供を約することにより一時に取得する契約金で政令で定めるもの
八 広告宣伝のための賞金又は馬主が受ける競馬の賞金で政令で定めるもの
2 前項の規定は、次に掲げるものについては、適用しない。
一 前項に規定する報酬若しくは料金、契約金又は賞金のうち、第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(次号において「給与等」という。)又は第三十条第一項(退職所得)に規定する退職手当等に該当するもの
二 前項第一号から第五号まで並びに第七号及び第八号に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金のうち、第百八十三条第一項(給与所得に係る源泉徴収義務)の規定により給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人以外の個人から支払われるもの
三 前項第六号に掲げる報酬又は料金のうち、同号に規定する施設の経営者(以下この条において「バー等の経営者」という。)以外の者から支払われるもの(バー等の経営者を通じて支払われるものを除く。)
3 第一項第六号に掲げる報酬又は料金のうちに、客からバー等の経営者を通じてホステス等に支払われるものがある場合には、当該報酬又は料金については、当該バー等の経営者を当該報酬又は料金に係る同項に規定する支払をする者とみなし、当該報酬又は料金をホステス等に交付した時にその支払があつたものとみなして、同項の規定を適用する。
②支払う者について
支払う会社や個人が対象となりますが、源泉徴収義務者となる者は、会社や個人だけではなく、給与等の支払いをする学校、人格のない社団等も含まれます。
ただし、常時2人以下のお手伝いさん等のような家事使用人だけに給与を支払っている個人は、その支払う給与や退職金について源泉徴収をする必要はないようです。
また、給与所得者が確定申告をするために税理士に報酬を支払っても、源泉徴収をする必要はありません。
③ 一定額について
源泉徴収すべき金額は、基本的には、支払金額(消費税込)に10.21%(所得税10%+復興特別所得税0.21%)を乗じた金額となります。
ただし、同一人に対して1回あたりの支払いが100万円を超える場合には、超過額については、20.42%(所得税20%+復興特別所得税0.42%)を乗じた金額となります。(例えば、支払額200万円の場合は、306,300円(100万円×20.42%+100万円×10.21%)となります。)
なお、消費税込の金額に一定の税率を乗じると述べましたが、相手先からの請求書等に報酬・料金等の金額と消費税等の額とが明確に区分されている場合には、消費税等の額を除いた報酬・料金等の金額のみを源泉徴収の対象としても問題ございません。
前条第一項の規定により徴収すべき所得税の額は、次の各号の区分に応じ当該各号に掲げる金額とする。
一 前条第一項第一号、第二号、第四号若しくは第五号又は第七号に掲げる報酬若しくは料金又は契約金(次号に掲げる報酬及び料金を除く。)その金額に百分の十(同一人に対し一回に支払われる金額が百万円を超える場合には、その超える部分の金額については、百分の二十)の税率を乗じて計算した金額
二 前条第一項第二号に掲げる司法書士、土地家屋調査士若しくは海事代理士の業務に関する報酬若しくは料金、同項第三号に掲げる診療報酬、同項第四号に掲げる職業拳けん闘家、外交員、集金人若しくは電力量計の検針人の業務に関する報酬若しくは料金、同項第六号に掲げる報酬若しくは料金又は同項第八号に掲げる賞金その金額(当該賞金が金銭以外のもので支払われる場合には、その支払の時における価額として政令で定めるところにより計算した金額)から政令で定める金額を控除した残額に百分の十の税率を乗じて計算した金額
④ 一定の時期について
源泉徴収した税額は、基本的に、給与等を支払った月の翌月10日までに納付することとなっております。
ただし、給与の支給人数が常時10人未満の場合、半年分まとめて納めることができる特例(納期の特例。俗に「納特」といいます)があり(その年の1月から6月までに源泉徴収した税額は7月10日、7月から12月までに源泉徴収した税額は翌年1月20日が、それぞれ納付期限となります。)、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」(以下、国税庁HPご参照)を提出すれば、申請書を提出した月の翌月の源泉徴収から、納期の特例の対象になります。
なお、納特の対象となるものは、給与、退職金、税理士、弁護士、司法書士等の一定の報酬とされています。
3. 業務委託費の取扱い
単に業務委託といっても、その内容は様々です。
最近では、フリーランスへの動画編集依頼やWeb制作の依頼等もあり、所得税法にドンピシャであてはまらない項目も多い気がしております。
その中で、業務委託費が源泉徴収の対象になるかどうですが、具体的には、所得税法第204条第1項第1号から8号(上記後参照)のいずれかに該当する場合は、源泉徴収の対象となり、該当しなければ、源泉徴収が不要だと考えられます。
したがって、「業務委託費の支払い=源泉徴収の対象」というわけではなく、業務委託の内容によって源泉徴収の対象になるかどうかを判断する必要がございます。
具体的な、業務委託費の内容、例えば、動画の編集等は別記事で記載させて頂こうと思います。
以上、となります。
フリーランスへの支払いは、迷うことがあろうかと思いますが、本記事が皆様にとって有益であれば何よりでございます。
なお、源泉徴収に係る税務の取扱いが網羅的に記載されている本が図解シリーズとなりますので、以下リンクをご参考ください。
ご拝読ありがとうございました。
※本記事の内容は、公開時(上記をご確認ください)の法令等に基づくものですので、ご留意ください。
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