調整対象固定資産を取得した場合の消費税の納税義務判定の取扱いをまとめました。
- 調整対象固定資産がわかる
- 調整対象固定資産を取得した場合の消費税納税義務判定についてわかる
目次
1. まとめ
結論から先に申し上げますと、調整対象固定資産を取得した場合の消費税の納税義務判定のポイントは以下のとおりとなります。
- 調整対象固定資産とは、棚卸資産以外の資産で、建物その他の資産で一の取引単位価額(税抜価額)が100万円以上のものをいう
- 課税事業者選択届出書を提出して課税事業者になった事業者等が課税強制期間中に調整対象固定資産を取得し、かつ、取得した課税期間において一般課税申告をした場合、一般課税が3年縛られる
- 課税事業者になった法人が、高額特定資産を取得し、かつ、取得した課税期間について一般課税で消費税の申告をした場合には、原則として、課税事業者として一般課税による申告が約3年間強制されることになる
2. 調整対象固定資産とは?
調整対象固定資産とは、棚卸資産以外の資産で、建物及びその附属設備、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で一の取引単位価額(税抜)が100万円以上のものをいいます。(詳細は以下条文をご参考ください。)
十六 調整対象固定資産 建物、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産でその価額が少額でないものとして政令で定めるものをいう。
引用元:消費税法第2条16項
(調整対象固定資産の範囲)
第五条 法第二条第一項第十六号に規定する政令で定める資産は、棚卸資産以外の資産で次に掲げるもののうち、当該資産に係る法第三十条第一項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額の百十分の百に相当する金額、当該資産に係る同項に規定する特定課税仕入れに係る支払対価の額又は保税地域から引き取られる当該資産の課税標準である金額が、一の取引の単位(通常一組又は一式をもつて取引の単位とされるものにあつては、一組又は一式)につき百万円以上のものとする。
一 建物及びその附属設備(暖冷房設備、照明設備、通風設備、昇降機その他建物に附属する設備をいう。)
二 構築物(ドック、橋、岸壁、桟橋、軌道、貯水池、坑道、煙突その他土地に定着する土木設備又は工作物をいう。)
三 機械及び装置
四 船舶
五 航空機
六 車両及び運搬具
七 工具、器具及び備品(観賞用、興行用その他これらに準ずる用に供する生物を含む。)
八 次に掲げる無形固定資産
イ 鉱業権(租鉱権及び採石権その他土石を採掘し、又は採取する権利を含む。)
ロ 漁業権(入漁権を含む。)
ハ ダム使用権
ニ 水利権
ホ 特許権
ヘ 実用新案権
ト 意匠権
チ 商標権
リ 育成者権
ヌ 公共施設等運営権
ル 樹木採取権
ヲ 営業権
ワ 専用側線利用権(鉄道事業法(昭和六十一年法律第九十二号)第二条第一項(定義)に規定する鉄道事業又は軌道法(大正十年法律第七十六号)第一条第一項(軌道法の適用対象)に規定する軌道を敷設して行う運輸事業を営む者(以下この号において「鉄道事業者等」という。)に対して鉄道又は軌道の敷設に要する費用を負担し、その鉄道又は軌道を専用する権利をいう。)
カ 鉄道軌道連絡通行施設利用権(鉄道事業者等が、他の鉄道事業者等、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構又は国若しくは地方公共団体に対して当該他の鉄道事業者等、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構若しくは独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構の鉄道若しくは軌道との連絡に必要な橋、地下道その他の施設又は鉄道若しくは軌道の敷設に必要な施設を設けるために要する費用を負担し、これらの施設を利用する権利をいう。)
ヨ 電気ガス供給施設利用権(電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第二条第一項第八号(定義)に規定する一般送配電事業、同項第十号に規定する送電事業若しくは同項第十四号に規定する発電事業又はガス事業法(昭和二十九年法律第五十一号)第二条第五項(定義)に規定する一般ガス導管事業を営む者に対して電気又はガスの供給施設(同条第七項に規定する特定ガス導管事業の用に供するものを除く。)を設けるために要する費用を負担し、その施設を利用して電気又はガスの供給を受ける権利をいう。)
タ 水道施設利用権(水道法(昭和三十二年法律第百七十七号)第三条第五項(用語の定義)に規定する水道事業者に対して水道施設を設けるために要する費用を負担し、その施設を利用して水の供給を受ける権利をいう。)
レ 工業用水道施設利用権(工業用水道事業法(昭和三十三年法律第八十四号)第二条第五項(定義)に規定する工業用水道事業者に対して工業用水道施設を設けるために要する費用を負担し、その施設を利用して工業用水の供給を受ける権利をいう。)
ソ 電気通信施設利用権(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第九条第一号(電気通信事業の登録)に規定する電気通信回線設備を設置する同法第二条第五号(定義)に規定する電気通信事業者に対して同条第四号に規定する電気通信事業の用に供する同条第二号に規定する電気通信設備の設置に要する費用を負担し、その設備を利用して同条第三号に規定する電気通信役務の提供を受ける権利をいう。)
九 第九条第二項に規定するゴルフ場利用株式等
十 次に掲げる生物(第七号に掲げるものに該当するものを除く。)
イ 牛、馬、豚、綿羊及びやぎ
ロ かんきつ樹、りんご樹、ぶどう樹、梨樹、桃樹、桜桃樹、びわ樹、くり樹、梅樹、柿樹、あんず樹、すもも樹、いちじく樹、キウイフルーツ樹、ブルーベリー樹及びパイナップル
ハ 茶樹、オリーブ樹、つばき樹、桑樹、こりやなぎ、みつまた、こうぞ、もう宗竹、アスパラガス、ラミー、まおらん及びホップ
十一 前各号に掲げる資産に準ずるもの引用元:消費税法施行令第5条
12-2-1 令第5条第11号《調整対象固定資産の範囲》に掲げる「前各号に掲げる資産に準ずるもの」には、例えば、次に掲げるものが含まれる。(平25課消1-34により改正)
(1) 回路配置利用権
(2) 預託金方式のゴルフ会員権
(3) 課税資産を賃借するために支出する権利金等
(4) 令第6条第1項第7号《著作権等の所在地》に規定する著作権等
(5) 他の者からのソフトウエアの購入費用又は他の者に委託してソフトウエアを開発した場合におけるその開発費用
(6) 書画・骨とう引用元:消費税法基本通達12-2-1
3. 調整対象固定資産を取得した場合の消費税の納税義務の判定
課税事業者選択届出書を提出して課税事業者になった事業者、新設法人の特例又は特定新規設立法人の特例対象の法人が、課税強制期間中に調整対象固定資産を取得し、かつ、取得した課税期間において一般課税申告をした場合、取得した課税期間以後の3年間は、免税事業者になれず、かつ、簡易課税制度も適用できないこととなります。課税事業者として一般課税が約3年間縛られることになってしまうため、留意が必要です。
7 第五項の場合において、第四項の規定による届出書を提出した事業者は、同項に規定する翌課税期間の初日から同日以後二年を経過する日までの間に開始した各課税期間(第三十七条第一項の規定の適用を受ける課税期間を除く。)中に国内における調整対象固定資産の課税仕入れ又は調整対象固定資産に該当する課税貨物(他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。第九項、第十二条の二第三項及び第十二条の四において同じ。)の保税地域からの引取り(以下この項、第十二条の二第二項及び第十二条の三第三項において「調整対象固定資産の仕入れ等」という。)を行つた場合(第四項に規定する政令で定める課税期間において当該届出書の提出前に当該調整対象固定資産の仕入れ等を行つた場合を含む。)には、前項の規定にかかわらず、事業を廃止した場合を除き、当該調整対象固定資産の仕入れ等の日(当該調整対象固定資産の仕入れ等に係る第三十条第一項各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日をいう。以下この項及び第十二条の二第二項において同じ。)の属する課税期間の初日から三年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、第四項の規定の適用を受けることをやめようとする旨を記載した届出書を提出することができない。この場合において、当該調整対象固定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日から当該調整対象固定資産の仕入れ等の日までの間に同項の規定の適用を受けることをやめようとする旨を記載した届出書をその納税地を所轄する税務署長に提出しているときは、次項の規定の適用については、その届出書の提出は、なかつたものとみなす。
引用元:消費税法第9条第7項
3 前条第二項及び第三項の規定は、特定新規設立法人がその基準期間がない事業年度に含まれる各課税期間(第三十七条第一項の規定の適用を受ける課税期間を除く。)中に調整対象固定資産の仕入れ等を行つた場合について準用する。この場合において、前条第二項中「前項の新設法人」とあるのは「次条第一項の特定新規設立法人」と、「当該新設法人」とあるのは「当該特定新規設立法人」と、「若しくは前項」とあるのは「、この項若しくは次条第一項」と読み替えるものとする。
引用元:消費税法第12の3条第3項
2 前項の新設法人が、その基準期間がない事業年度に含まれる各課税期間(第三十七条第一項の規定の適用を受ける課税期間を除く。)中に調整対象固定資産の仕入れ等を行つた場合には、当該新設法人の当該調整対象固定資産の仕入れ等の日の属する課税期間から当該課税期間の初日以後三年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間(その基準期間における課税売上高が千万円を超える課税期間及び第九条第四項の規定による届出書の提出により、又は第九条の二第一項、第十一条第三項若しくは第四項、前条第一項から第三項まで若しくは前項の規定により消費税を納める義務が免除されないこととなる課税期間を除く。)における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、第九条第一項本文の規定は、適用しない。
引用元:消費税法第12の2条第2項
なお、高額特定資産を取得した場合の消費税の納税義務判定については、以下の別記事でまとめておりますので、ご参考ください。
高額特定資産を取得した場合の消費税の納税義務判定:https://loki-tax.com/judgment-of-consumption-tax-obligation-when-acquiring-a-large-amount-of-specified-assets/
以上、となります。
本記事が皆様にとって有益であれば何よりでございます。
ご拝読ありがとうございました。
※本記事の内容は、公開時(上記をご確認ください)の法令等に基づくものですので、ご留意ください。
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