CIP(技術研究組合)の税務上の取扱いについて

技術研究組合(以下、「CIP」という)の税務上の取扱いをまとめてみました。

本記事で分かること!
  • CIPの法人税申告書を作成できる
  • 組合員含め、CIP特有の論点を確認できる

目次

1. CIPの税務上の論点まとめ

結論から先に申し上げますと、CIPの税務上のポイントは以下のとおりとなります。

    • 内国法人である普通法人に該当
    • 別表2(同族会社等の判定に関する明細書):作成不要
    • 別表13(9)(賦課金で取得した試験研究用資産の圧縮額の損金算入に関する明細書):作成必要
    • 資本金等の額の概念がない
    • 賦課金の仮受処理が認められている
    • 組合員が支出する賦課金は試験研究費に該当

2. CIPとは

CIPとは、技術研究組合法に基づき、産業活動において利用される技術の向上及び実用化を図るため、これに関する試験研究を協同して行うために必要な組織等について定めることを目的として設立される法人である。<技術研究組合法第1条、第2条第1項>

CIPは組合員からの賦課金を利用し研究開発を行う組織であるが、CIPの詳細については、経済産業省HP(https://www.meti.go.jp/policy/tech_promotion/kenkyuu/001.html)をご参照ください。

CIPの法人税法上の取扱いですが、
まず、CIPを国内で設立する場合は、「内国法人である普通法人」に該当します。

内国法人か外国法人かは、国内に事務所の所在地があるかどうかにより判断することになりますが、CIPを国内で設立することにより、そのCIPの住所は、その主たる事務所の所在地にあるものとされる<技術研究組合法第2条第2項>ため、内国法人に該当することになります。

次に、CIPは公共法人、公益法人等、協同組合及び人格のない社団等に該当しないことから、法人税法上、普通法人に該当することとなります。
また、会社法上の会社には該当しないことに留意する必要がございます。ここは後の章「3. CIPの法人税申告書作成のポイント」に関わってきます。

【ご参考】
・内国法人:国内に本店又は主たる事務所を有する法人をいう。<法人税法第2条第3号>
・普通法人:第五号から第七号までに掲げる法人以外の法人をいい、人格のない社団等を含まない。<法人税法第2条第9号>
・会社:株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社をいう。<会社法第2条第1号>

3. CIPの法人税申告書作成のポイント

CIPの法人税申告書作成のポイントは以下のとおりとなります。それ以外は通常の株式会社等の普通法人と同じ論点となりますので、割愛させて頂きます。

① 別表2:作成不要
別表2とは、同族会社等の判定に関する明細書のことであり、CIPの場合、当該別表の添付は不要となります。理由としては、別表2の国税庁HPにある記載要領を確認すると、「会社が・・・」と記載があり、会社でなければ、記載は不要と読み取れます。

それでは、「会社」とは一体何を指すのでしょうか?
こちらは上で記載したこととなりますが、法人税法上、「会社」の定義の記載がありませんので、別の法律を参照する必要があり、一般的には会社法を参照することになろうかと思います。

会社法を確認してみると、会社とは、株式会社や合同会社等のことを指すとのことで、技術研究組合は含まれないものと考えられます。

したがって、CIPは会社ではないため、別表2は作成する必要がないと考えられます。

② 別表13(9):作成必要
別表13(9)とは、賦課金で取得した試験研究用資産の圧縮額の損金算入に関する明細書のことであり、CIP特有の別表といえます。

CIPの場合作成が必要となるのですが、、これは一体どういった別表なのでしょうか?

まず、CIPが組合員から賦課金という名の金銭を受けるのですが、賦課金は税務上益金の額に算入されることとなります。CIPの目的が研究開発であることから、賦課金を利用し研究開発に係る一定の固定資産を購入した場合、減価償却を通じて、損金算入させると一時的に賦課金に課税されることとなり、研究開発を抑制することにもなりかねない事から、賦課金で取得した試験研究用資産について、圧縮記帳が認められることとなっております。

ただし、賦課金を利用して取得する固定資産は一定のものに限定されていることに留意する必要がございます。
一定のものとは、構築物、車両運搬具、器具備品等であり、建物、建物付属設備やソフトウェアが除かれていることに留意する必要がございます<租税特別措置法施行令第39条の21、法人税法施行令第13条>

租税特別措置法第66条の10:
青色申告書を提出する技術研究組合(清算中のものを除く。)が、令和三年三月三十一日までに技術研究組合法(昭和三十六年法律第八十一号)第九条第一項の規定により同法第三条第一項第一号に規定する試験研究の用に直接供する固定資産で政令で定めるもの(以下この条において「試験研究用資産」という。)を取得し、又は製作するための費用を賦課し、当該賦課に基づいて納付された金額の全部又は一部に相当する金額をもつてその納付された事業年度において試験研究用資産を取得し、又は製作した場合において、当該試験研究用資産につき、その取得価額から一円(当該試験研究用資産の取得価額がその納付された金額(既に試験研究用資産の取得に充てられた金額があるときは、その金額を控除した金額)を超える場合には、その超える金額)を控除した金額の範囲内でその帳簿価額を損金経理により減額したときは、その減額した金額に相当する金額は、その取得の日を含む事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
2 前項の規定は、確定申告書等に同項の規定により損金の額に算入される金額の損金算入に関する申告の記載があり、かつ、当該確定申告書等にその損金の額に算入される金額の計算に関する明細書の添付がある場合に限り、適用する。
3 第一項の規定の適用を受けた試験研究用資産について法人税に関する法令の規定を適用する場合には、同項の規定により各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された金額は、当該試験研究用資産の取得価額に算入しない。
4 前二項に定めるもののほか、第一項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
租税特別措置法施行令第39条の21:
法第六十六条の十第一項に規定する政令で定める固定資産は、法人税法施行令第十三条第二号から第七号までに掲げる減価償却資産、鉱業権(租鉱権及び採石権その他土石を採掘し、又は採取する権利を含む。)、特許権、実用新案権、意匠権及び電気ガス供給施設利用権とする。
法人税法施行令第13条:
法第二条第二十三号(定義)に規定する政令で定める資産は、棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産のうち次に掲げるもの(事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)とする。
一 建物及びその附属設備(暖冷房設備、照明設備、通風設備、昇降機その他建物に附属する設備をいう。)
二 構築物(ドック、橋、岸壁、桟橋、軌道、貯水池、坑道、煙突その他土地に定着する土木設備又は工作物をいう。)
三 機械及び装置
四 船舶
五 航空機
六 車両及び運搬具
七 工具、器具及び備品
(観賞用、興行用その他これらに準ずる用に供する生物を含む。)
八 次に掲げる無形固定資産
イ 鉱業権(租鉱権及び採石権その他土石を採掘し又は採取する権利を含む。)
ロ 漁業権(入漁権を含む。)
ハ ダム使用権
ニ 水利権
ホ 特許権
ヘ 実用新案権
ト 意匠権
チ 商標権
リ ソフトウエア
ヌ 育成者権
ル 公共施設等運営権
ヲ 樹木採取権
ワ 営業権
カ 専用側線利用権(鉄道事業法(昭和六十一年法律第九十二号)第二条第一項(定義)に規定する鉄道事業又は軌道法(大正十年法律第七十六号)第一条第一項(軌道法の適用対象)に規定する軌道を敷設して行う運輸事業を営む者(以下この号において「鉄道事業者等」という。)に対して鉄道又は軌道の敷設に要する費用を負担し、その鉄道又は軌道を専用する権利をいう。)
ヨ 鉄道軌道連絡通行施設利用権(鉄道事業者等が、他の鉄道事業者等、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構又は国若しくは地方公共団体に対して当該他の鉄道事業者等、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構若しくは独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構の鉄道若しくは軌道との連絡に必要な橋、地下道その他の施設又は鉄道若しくは軌道の敷設に必要な施設を設けるために要する費用を負担し、これらの施設を利用する権利をいう。)
タ 電気ガス供給施設利用権(電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第二条第一項第八号(定義)に規定する一般送配電事業、同項第十号に規定する送電事業若しくは同項第十四号に規定する発電事業又はガス事業法(昭和二十九年法律第五十一号)第二条第五項(定義)に規定する一般ガス導管事業を営む者に対して電気又はガスの供給施設(同条第七項に規定する特定ガス導管事業の用に供するものを除く。)を設けるために要する費用を負担し、その施設を利用して電気又はガスの供給を受ける権利をいう。)
レ 水道施設利用権(水道法(昭和三十二年法律第百七十七号)第三条第五項(用語の定義)に規定する水道事業者に対して水道施設を設けるために要する費用を負担し、その施設を利用して水の供給を受ける権利をいう。)
ソ 工業用水道施設利用権(工業用水道事業法(昭和三十三年法律第八十四号)第二条第五項(定義)に規定する工業用水道事業者に対して工業用水道施設を設けるために要する費用を負担し、その施設を利用して工業用水の供給を受ける権利をいう。)
ツ 電気通信施設利用権(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第九条第一号(電気通信事業の登録)に規定する電気通信回線設備を設置する同法第二条第五号(定義)に規定する電気通信事業者に対して同条第四号に規定する電気通信事業の用に供する同条第二号に規定する電気通信設備の設置に要する費用を負担し、その設備を利用して同条第三号に規定する電気通信役務の提供を受ける権利(電話加入権及びこれに準ずる権利を除く。)をいう。)
九 次に掲げる生物(第七号に掲げるものに該当するものを除く。)
イ 牛、馬、豚、綿羊及びやぎ
ロ かんきつ樹、りんご樹、ぶどう樹、梨樹、桃樹、桜桃樹、びわ樹、くり樹、梅樹、柿樹、あんず樹、すもも樹、いちじく樹、キウイフルーツ樹、ブルーベリー樹及びパイナップル
ハ 茶樹、オリーブ樹、つばき樹、桑樹、こりやなぎ、みつまた、こうぞ、もう宗竹、アスパラガス、ラミー、まおらん及びホップ

 

③ 資本金等の額の入力は不要
CIPは組合員から出資ではなく賦課金に基づき運営をすることから、資本金等の額の概念はございません。つまり、資本金等の額を記載する別表5(1)等の資本金欄はブランクとなります。
また、資本金等の額がないため、均等割りは東京都の場合、年額70,000円となります。

④ その他
賦課金を収受したけれども、当該賦課金を使用しない部分がある場合があり、仮受金処理し、かつ、試験研究用資産を取得できなかったことについて相当な事由がある場合には、繰延べが認められることとなっております。<租税特別措置法基本通達第66の10-1>

租税特別措置法基本通達第66の10-1:
措置法第66条の10第1項に掲げる法人が、同項に規定する試験研究用資産を取得し、又は製作するための費用を賦課し、その賦課に基づいて納付された事業年度においてその目的とした同項に規定する試験研究用資産を取得することができなかった場合において、その納付された賦課金を仮受金として経理したときは、その取得できなかったことについて相当の事由があると認められる場合に限り、そのできないと認められる事由が消滅し当該試験研究用資産を取得するために通常要すると認められる期間を経過するまでは、これを認める。(昭50年直法2-21「58」、昭53年直法2-24「50」、平20年課法2-14「二十三」により改正)

4. CIP組合員の賦課金の税務上の取扱い

CIP組合員によるCIPへの賦課金(技術研究組合法第9条第1項の規定により賦課される費用)は試験研究費に該当することになります。<租税特別措置法施行令第27条の4第3項第1号ハ、租税特別措置法第42条の4第8項第1号>
なお、当該賦課金は技術研究組合法第9条第1項に記載の賦課金である必要があるのですが、第9条第1項に記載のとおり、一般的には技術研究組合法第9条第1項を満たすものと考えれます。

租税特別措置法第42条の4第8項第1号:
この条において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 試験研究費 製品の製造若しくは技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究のために要する費用又は対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究として政令で定めるもののために要する費用で、政令で定めるものをいう。
租税特別措置法施行令第27条の4第3項第1号ハ:
3 法第四十二条の四第八項第一号に規定する政令で定める費用は、次の各号に掲げる試験研究の区分に応じ当該各号に定める費用とする。
一 製品の製造又は技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究 次に掲げる費用
イ その試験研究を行うために要する原材料費、人件費(専門的知識をもつて当該試験研究の業務に専ら従事する者に係るものに限る。)及び経費
ロ 他の者に委託をして試験研究を行う当該法人(人格のない社団等を含む。以下この章において同じ。)の当該試験研究のために当該委託を受けた者に対して支払う費用
ハ 技術研究組合法第九条第一項の規定により賦課される費用
技術研究組合法第9条:
組合は、定款で定めるところにより、組合員に組合の事業に要する費用を賦課することができる。

以上、となります。

技術研究組合は日本でも多くないため、迷うことがあろうかと思いますが、上記を意識すれば、法人税申告書は作成できるかと思います。
本記事が皆様にとって有益であれば何よりでございます。

ご拝読ありがとうございました。

※本記事の内容は、公開時(上記をご確認ください)の法令等に基づくものですので、ご留意ください。

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