【源泉徴収】非居住者の人的役務の提供に係る支払い(国内法)

人的役務の提供

非居住者の人的役務の提供に係る支払いに関して、源泉徴収等の取扱いをまとめてみました。

本記事で分かること!
  • 非居住者の人的役務の提供に係る支払い(国内法)の取扱いがわかる

目次

1. まとめ

結論から先に申し上げますと、非居住者の人的役務の提供に係る支払い(国内法)の源泉徴収のポイントは以下のとおりとなります。

  • ①国内法、②租税条約、の順で整理する必要がある
  • 芸能人の事業であれば、人的役務の提供に該当し、芸能人のマネージャー事業であれば、人的役務の提供に該当しないもよう
  • 人的役務の提供の場合の国内源泉所得に該当してしまうと、使用料等と違い、その非居住者は源泉徴収された上で、日本で総合課税の対象となる

2. 非居住者への源泉徴収の税務上の考え方

居住者への支払いであれば簡単だけど、非居住者への支払いとなると難しいし、どう整理していいか分からない。等の疑問がございましたら、本記事をご参考にして頂けますと幸いです。

非居住者への支払いは、まずは日本国内法(所得税法、所得税法施行令等)を確認する必要がございます。
国内法で源泉徴収自体が不要であれば、租税条約を確認する必要がございませんので、まずは国内法を確認致します。

次に、国内法で源泉徴収が必要そうであれば、非居住者の所在する国と日本国との間の租税条約で軽減又は減免されている可能性があるので、租税条約を確認する必要がございます。

結論としては、①国内法の確認、②租税条約の確認、の順番で確認することになります。(国内の方への支払いであれば、国内法だけの確認で済むので、非居住者への支払いとなると手間が増えてしまいますね。。)

なお、相手国の国内法(例えば、アメリカ居住の方(個人)への支払いであれば、アメリカの法律)は、日本から支払う以上、確認する必要はございませんので、ご留意ください。

3. 国内法の取扱い

非居住者(ここでは外国法人の取扱いについて言及しておりませんので、ご留意ください。)に対して支払う役務の提供を整理するために、まず非居住者への支払いが日本国内法でどのような取扱いになっているか確認する必要がございます。

そこで、所得税法第212条第1項(以下ご参照)を確認してみると、「非居住者に対する支払い」で「国内において」「第百六十一条第一項第四号から第十六号まで(国内源泉所得)に掲げる国内源泉所得」の「支払をする者」は、支払の際に源泉徴収をしなければならないと、記載されております。

まず、「国内において」とあるように、非居住者が「国内において」役務提供を行わない限り、国内源泉所得に該当しないため、源泉徴収が必要ありません。

人的役務の提供は、所得税法第161条第1項第6号に該当し、「国内において人的役務の提供を主たる内容とする事業で政令で定めるものを行う者が受ける当該人的役務の提供に係る対価」と記載されておりますが、当該施行令は所得税法施行令第282条(以下ご参照)を指します。

また、人的役務の提供に関する説明として、所得税法基本通達161-20及び所得税法基本通達161-21(以下ご参照)にも記載がございます。

施行令及び基本通達を確認すると、「・・・芸能人・・の役務の提供を主たる内容とする事業」等の施行令に列挙されたものが、人的役務の提供に該当し、「芸能人のマネージャー」等の通達に列挙されたものは人的役務の提供に該当しないようです。

人的役務の提供に該当するかどうかは個別判断になろうかと思いますので、お困りの際は顧問の会計士・税理士にご確認ください。

そして、、人的役務の提供の場合の国内源泉所得に該当してしまうと、使用料等と違い、その非居住者は源泉徴収された上で、日本で総合課税の対象(つまり、確定申告必要)となってしまいますので、留意が必要です。(以下国税庁HPが参考になりますので、詳細は以下リンクをご参照ください。)

  • 国税庁HP:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/23/01.htm
  • 所得税法第212条第1項:
    非居住者に対し国内において第百六十一条第一項第四号から第十六号まで(国内源泉所得)に掲げる国内源泉所得(政令で定めるものを除く。)の支払をする者又は外国法人に対し国内において同項第四号から第十一号まで若しくは第十三号から第十六号までに掲げる国内源泉所得(第百八十条第一項(恒久的施設を有する外国法人の受ける国内源泉所得に係る課税の特例)又は第百八十条の二第一項若しくは第二項(信託財産に係る利子等の課税の特例)の規定に該当するもの及び政令で定めるものを除く。)の支払をする者は、その支払の際、これらの国内源泉所得について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。

    所得税法第213条第1項:
    前条第一項の規定により徴収すべき所得税の額は、次の各号の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
    一 前条第一項に規定する国内源泉所得(次号及び第三号に掲げるものを除く。)その金額(次に掲げる国内源泉所得については、それぞれ次に定める金額)に百分の二十の税率を乗じて計算した金額
    イ 第百六十一条第一項第十二号ロ(国内源泉所得)に掲げる年金その支払われる年金の額から五万円にその支払われる年金の額に係る月数を乗じて計算した金額を控除した残額
    ロ 第百六十一条第一項第十三号に掲げる賞金その金額(金銭以外のもので支払われる場合には、その支払の時における価額として政令で定めるところにより計算した金額)から五十万円を控除した残額
    ハ 第百六十一条第一項第十四号に掲げる年金同号に規定する契約に基づいて支払われる年金の額から当該契約に基づいて払い込まれた保険料又は掛金の額のうちその支払われる年金の額に対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額を控除した残額
    二 第百六十一条第一項第五号に掲げる国内源泉所得その金額に百分の十の税率を乗じて計算した金額
    三 第百六十一条第一項第八号及び第十五号に掲げる国内源泉所得その金額に百分の十五の税率を乗じて計算した金額

    所得税法第161条第1項:
    この編において「国内源泉所得」とは、次に掲げるものをいう。
    一 非居住者が恒久的施設を通じて事業を行う場合において、当該恒久的施設が当該非居住者から独立して事業を行う事業者であるとしたならば、当該恒久的施設が果たす機能、当該恒久的施設において使用する資産、当該恒久的施設と当該非居住者の事業場等(当該非居住者の事業に係る事業場その他これに準ずるものとして政令で定めるものであつて当該恒久的施設以外のものをいう。次項及び次条第二項において同じ。)との間の内部取引その他の状況を勘案して、当該恒久的施設に帰せられるべき所得(当該恒久的施設の譲渡により生ずる所得を含む。)
    二 国内にある資産の運用又は保有により生ずる所得(第八号から第十六号までに該当するものを除く。)
    三 国内にある資産の譲渡により生ずる所得として政令で定めるもの
    四 民法第六百六十七条第一項(組合契約)に規定する組合契約(これに類するものとして政令で定める契約を含む。以下この号において同じ。)に基づいて恒久的施設を通じて行う事業から生ずる利益で当該組合契約に基づいて配分を受けるもののうち政令で定めるもの
    五 国内にある土地若しくは土地の上に存する権利又は建物及びその附属設備若しくは構築物の譲渡による対価(政令で定めるものを除く。)
    六 国内において人的役務の提供を主たる内容とする事業で政令で定めるものを行う者が受ける当該人的役務の提供に係る対価
    七 国内にある不動産、国内にある不動産の上に存する権利若しくは採石法(昭和二十五年法律第二百九十一号)の規定による採石権の貸付け(地上権又は採石権の設定その他他人に不動産、不動産の上に存する権利又は採石権を使用させる一切の行為を含む。)、鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)の規定による租鉱権の設定又は居住者若しくは内国法人に対する船舶若しくは航空機の貸付けによる対価
    八 第二十三条第一項(利子所得)に規定する利子等のうち次に掲げるもの
    イ 日本国の国債若しくは地方債又は内国法人の発行する債券の利子
    ロ 外国法人の発行する債券の利子のうち当該外国法人の恒久的施設を通じて行う事業に係るもの
    ハ 国内にある営業所、事務所その他これらに準ずるもの(以下この編において「営業所」という。)に預け入れられた預貯金の利子
    ニ 国内にある営業所に信託された合同運用信託、公社債投資信託又は公募公社債等運用投資信託の収益の分配
    九 第二十四条第一項(配当所得)に規定する配当等のうち次に掲げるもの
    イ 内国法人から受ける第二十四条第一項に規定する剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、金銭の分配又は基金利息
    ロ 国内にある営業所に信託された投資信託(公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託を除く。)又は特定受益証券発行信託の収益の分配
    十 国内において業務を行う者に対する貸付金(これに準ずるものを含む。)で当該業務に係るものの利子(政令で定める利子を除き、債券の買戻又は売戻条件付売買取引として政令で定めるものから生ずる差益として政令で定めるものを含む。)
    十一 国内において業務を行う者から受ける次に掲げる使用料又は対価で当該業務に係るもの
    イ 工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるものの使用料又はその譲渡による対価
    ロ 著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)の使用料又はその譲渡による対価
    ハ 機械、装置その他政令で定める用具の使用料
    十二 次に掲げる給与、報酬又は年金
    イ 俸給、給料、賃金、歳費、賞与又はこれらの性質を有する給与その他人的役務の提供に対する報酬のうち、国内において行う勤務その他の人的役務の提供(内国法人の役員として国外において行う勤務その他の政令で定める人的役務の提供を含む。)に基因するもの
    ロ 第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等(政令で定めるものを除く。)
    ハ 第三十条第一項(退職所得)に規定する退職手当等のうちその支払を受ける者が居住者であつた期間に行つた勤務その他の人的役務の提供(内国法人の役員として非居住者であつた期間に行つた勤務その他の政令で定める人的役務の提供を含む。)に基因するもの
    十三 国内において行う事業の広告宣伝のための賞金として政令で定めるもの
    十四 国内にある営業所又は国内において契約の締結の代理をする者を通じて締結した保険業法第二条第三項(定義)に規定する生命保険会社又は同条第四項に規定する損害保険会社の締結する保険契約その他の年金に係る契約で政令で定めるものに基づいて受ける年金(第二百九条第二号(源泉徴収を要しない年金)に掲げる年金に該当するものを除く。)で第十二号ロに該当するもの以外のもの(年金の支払の開始の日以後に当該年金に係る契約に基づき分配を受ける剰余金又は割戻しを受ける割戻金及び当該契約に基づき年金に代えて支給される一時金を含む。)
    十五 次に掲げる給付補塡金、利息、利益又は差益
    イ 第百七十四条第三号(内国法人に係る所得税の課税標準)に掲げる給付補塡金のうち国内にある営業所が受け入れた定期積金に係るもの
    ロ 第百七十四条第四号に掲げる給付補塡金のうち国内にある営業所が受け入れた同号に規定する掛金に係るもの
    ハ 第百七十四条第五号に掲げる利息のうち国内にある営業所を通じて締結された同号に規定する契約に係るもの
    ニ 第百七十四条第六号に掲げる利益のうち国内にある営業所を通じて締結された同号に規定する契約に係るもの
    ホ 第百七十四条第七号に掲げる差益のうち国内にある営業所が受け入れた預貯金に係るもの
    ヘ 第百七十四条第八号に掲げる差益のうち国内にある営業所又は国内において契約の締結の代理をする者を通じて締結された同号に規定する契約に係るもの
    十六 国内において事業を行う者に対する出資につき、匿名組合契約(これに準ずる契約として政令で定めるものを含む。)に基づいて受ける利益の分配
    十七 前各号に掲げるもののほかその源泉が国内にある所得として政令で定めるもの

    所得税法施行令第282条:
    法第百六十一条第一項第六号(国内源泉所得)に規定する政令で定める事業は、次に掲げる事業とする。
    一 映画若しくは演劇の俳優、音楽家その他の芸能人又は職業運動家の役務の提供を主たる内容とする事業
    二 弁護士、公認会計士、建築士その他の自由職業者の役務の提供を主たる内容とする事業
    三 科学技術、経営管理その他の分野に関する専門的知識又は特別の技能を有する者の当該知識又は技能を活用して行う役務の提供を主たる内容とする事業(機械設備の販売その他事業を行う者の主たる業務に付随して行われる場合における当該事業及び法第二条第一項第八号の四ロ(定義)に規定する建設又は据付けの工事の指揮監督の役務の提供を主たる内容とする事業を除く。)

    所得税法基本通達161-20:
    国内において人的役務の提供を行う者の事業が法第161条第1項第6号に規定する人的役務の提供を主たる内容とする事業に該当するかどうかは、国内における人的役務の提供に関する契約ごとに、その契約に基づく人的役務の提供が令第282条各号《人的役務の提供を主たる内容とする事業の範囲》に掲げる事業に該当するかどうかにより判定するものとする。この場合、国内において法第161条第1項第6号に規定する人的役務の提供を主たる内容とする事業を行う者には、国内において当該事業を行う他の非居住者又は外国法人に対し、令第282条各号に掲げる人的役務の提供を主たる内容とする事業を行う非居住者又は外国法人も含まれることに留意する。(平4課法8-5、課所4-3改正、平28課2-4、課法11-8、課審5-5改正)

    所得税法基本通達161-21:
    法第161条第1項第6号に規定する「人的役務の提供を主たる内容とする事業」とは、非居住者が営む自己以外の者の人的役務の提供を主たる内容とする事業又は外国法人が営む人的役務の提供を主たる内容とする事業で令第282条各号に掲げるものをいうことに留意する。したがって、非居住者が次に掲げるような者を伴い国内において自己の役務を主たる内容とする役務の提供をした場合に受ける報酬は、法第161条第1項第6号に掲げる対価に該当するのではなく、同項第12号イに掲げる報酬に該当する(平28課2-4、課法11-8、課審5-5改正)。
    (1) 弁護士、公認会計士等の自由職業者の事務補助者
    (2) 映画、演劇の俳優、音楽家、声楽家等の芸能人のマネージャー、伴奏者、美容師
    (3) プロボクサー、プロレスラー等の職業運動家のマネージャー、トレーナー
    (4) 通訳、秘書、タイピスト

     

    以上、となります。

    非居住者への支払いは、迷うことがあろうかと思いますが、本記事が皆様にとって有益であれば何よりでございます。

    なお、源泉徴収に係る税務の取扱いが網羅的に記載されている本が図解シリーズとなりますので、以下リンクをご参考ください。

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    ご拝読ありがとうございました。

    ※本記事の内容は、公開時(上記をご確認ください)の法令等に基づくものですので、ご留意ください。

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